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田村秀男

【第1392回】首相は粛々と減税と成長戦略を実行せよ

田村秀男 / 2026.08.03 (月)


国基研企画委員・産経新聞特別記者 田村秀男

 

 高市早苗首相は7月30日、現在8%の食料品の消費税率を来年4月から2年間、1%に引き下げる意向を表明した。部分的にせよ消費税率を引き下げるのは1989年4月の導入以来初めてだ。先の衆院選での公約に沿った当然の決断だが、足元の自民党内では反対論が噴出し、有力全国紙も社説などで執拗に批判する。これらに共通する主な論拠は、社会保障財源である消費税収が4兆円ほど減るというものだが、経済のダイナミズムに無知な小学生式の掛け算に過ぎない。

 ●経済が伸びれば税収は増える
 社会保障財源は社会保険料と税収で構成され、消費税収はその一部だ。国の一般会計税収は2025年度決算で84.2兆円であり、このうち消費税収は26兆円。社会保障給付費は毎年で2兆円余り増えている。25年度税収は前年度より12%、9兆円増えた。このペースが今後も続くとは限らないが、確かなことは物価上昇率を加味した名目GDP(国内総生産)が伸びれば、それをはるかに上回る速度で税収が増えるという事実である。
 新型コロナウイルスが大流行した2020年度に当時の安倍晋三政権が打ち出した100兆円を超える大型財政出動の結果、景気は拡大基調に入った。20年度から25年度までの名目GDPは年平均3.2%、税収は同5.6%の増加率だ。
 これに対し、1997年度から2019年度までの期間ではそれぞれ0.1%、0.3%の増加率に過ぎない。この22年間で3度も消費税率を大幅に引き上げた結果、消費税収だけは確かに増えたが、慢性デフレから抜け出せず、法人税、所得税収が落ち込み、税収全体は停滞した。財政は不健全化し、政府債務は膨張の一途だった。にもかかわらず、自民党の一部やメディアの多くは増税失敗の教訓から学ぼうとしない。

 ●立ちはだかる財政規律派
 高市政権は、消費税減税に先立って閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2026」では、政策経費を税収の範囲内にとどめる基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)黒字化の縛りを解き、戦略17分野への国内投資促進を目指す。人工知能(AI)、量子技術、先端半導体などで覇権を狙う中国に対抗するための最優先策であり、日米のパートナーシップ強化を導く。
 ところが、そこにも財政規律派が立ちはだかる。有力経済メディアは連日のように財政不安をあおり、円売り投機をそそのかす。だが、世界の投資家が高市成長戦略は本物だと確信すれば、市場の潮目は変わるだろう。首相は粛々と消費税減税法案を決裁し、中長期の成長戦略を着実に実行すればよい。(了)